米寿にて : 人生劇場

　宣伝業を営んでいた父が他界。「女は手に職をつけなさい」を口癖に家業を継ぎ、お手本の様な生き様を見せてくれていた母ももう米寿。贈り物に「人生劇場®」は？と娘から提案され、「皆の思い出になる贈り物」はこれしかないと準備を進めました。私が生まれる前の事を母に尋ねると、生き生きとその当時を鮮明に教えてくれて。その会話や笑顔は今も忘れられませんね。家族皆で開いた「米寿の会」。無我夢中で制作した映像でしたが、時代の流れを追いゆっくり字幕で語られる母や家族の人生は、一枚一枚の写真をただ見るよりも何倍も何倍も心に響き、母も大喜びでした。しかしその数ヵ月後、母は父の元へ静かに旅立ちました。通夜の席で映像を見た方々も「いいものができたね」と大号泣。今は本当に「母の子どもで幸せ」という気持ちでいっぱいです。（2009年9月20日 米寿のお祝い会、 通夜にて上映）

掲載誌/ラジオ深夜便2月号（財団法人NHKサービスセンター）2010年1月18日発売